「待つ」か「今やる」か──イラン情勢で揺れる住まいの修繕、どう決める

「お風呂を新しくしたかったのに、注文できないと言われた」

「外壁の塗り替えを頼んだら、シンナーが値上がりして見積もりが大きく変わった」

2026年に入ってから、こうした声が住まいの現場で急に増えています。きっかけは、遠い中東で起きているイラン情勢の悪化です。「中東の話が、なぜうちの家のリフォームに?」と感じる方も多いでしょう。じつはこの問題、住まいを持つすべての人に関わる話です。

この記事では、いま住んでいる家のメンテナンスや修繕を「待つべきか、今やるべきか」を判断するための考え方を、市民の目線でわかりやすくお伝えします。

なぜ家の修繕に影響が出ているのか

原油の多くは、中東のホルムズ海峡という細い海を通って日本に運ばれてきます。2026年2月末からこの海峡の通航が不安定になり、原油から作られる「ナフサ」という物質の供給が大きく減りました。

ナフサは、塩ビ管・断熱材・塗料・防水シート・接着剤・シンナーなど、住まいを直すときに使う多くの建材の原料です。つまり、お風呂・トイレ・屋根・外壁・水回り──家のあちこちに使う材料の値段が上がり、ものによっては「注文しても届かない」状態になっているのです。

大手メーカーの動きを見ると、深刻さがわかります。

  • 塗料用シンナー:約75%の値上げ
  • 屋根用の防水材(アスファルトルーフィング):4割超の値上げ
  • 住宅用断熱材:約4割の値上げ
  • ユニットバス・トイレ:大手メーカーが一時、新規受注を停止(2026年4月時点で段階的に再開)

1.「待てば安くなる」は本当か

「情勢が落ち着けば、また値段は元に戻るのでは?」と考える方は多いと思います。気持ちはよくわかります。しかし、結論から申し上げると、「待てば安くなる」とあてにするのは難しいのが現実です。

理由は3つあります。

1つめは、価格の波が長く続くこと。専門家は、原油価格の影響が建材の値段に反映されるのは数か月遅れて起きるため、少なくとも2026年の終わりごろまで値上げの波は続くと見ています。

2つめは、家の傷みは待ってくれないこと。雨漏りやひび割れを放っておくと、傷みは確実に広がります。あとで直すときには、修理する範囲が広がり、結局かかる費用も大きくなりがちです。

3つめは、住宅ローンや借入の金利が上がっていること。大きな修繕でローンを使う場合、待っているあいだに金利が上がれば、総支払額はかえって増えてしまうこともあります。

2. 待てる修繕・待てない修繕の見分け方

とはいえ、「すべての修繕を今すぐやるべき」というわけではありません。家の状態によって、優先順位は変わります。次の表をご覧ください。

緊急度こんな状態判断のめやす
すぐ動く雨漏り、外壁のひび割れから水がしみ込んでいる、シロアリの跡、配管の水もれ放置すると被害が一気に広がる。資材が高くても今すぐ専門家に相談
今年中に動く築10年以上で外壁・屋根の点検をしていない、お風呂やトイレの不具合が出始めた悪化する前に点検と見積もり依頼。資材確保のため早めの予約を
少し待てる機能に問題はないが古くなってきた設備、見た目だけのリフォーム緊急度は低い。情勢の落ち着きを見ながら、来年以降の検討でも可

大切なのは、「我が家がどの段階にあるかを知ること」です。自分でわからない場合は、無料点検をおこなっている工務店や、住まいの相談窓口を活用しましょう。

3. 今すぐできる「劣化のサイン探し」

専門家を呼ぶ前に、ご自身でできるチェックがあります。お金もかかりません。次の場所を、ぜひ一度よく見てみてください。

屋根まわり

  • 地面に屋根材のかけらが落ちていないか
  • 雨どいが歪んだり外れたりしていないか

外壁

  • 指でなぞると白い粉がつく(チョーキングという劣化のサイン)
  • 髪の毛のような細いひび割れがある
  • コーキング(継ぎ目のゴム状の部分)が痩せて隙間ができている

水まわり

  • 排水のとき、ゴボゴボと音がする
  • 床がふわふわする、シミがある
  • 蛇口の根元から水がにじむ

こうしたサインが1つでもあれば、早めの点検をおすすめします。サインがなければ、当面は「待てる修繕」と判断できる材料になります。

4. 修繕を頼むときの3つの注意点

いざ修繕を頼むとなったとき、これまで以上に気をつけたいポイントがあります。建材の値段や納期が不安定な今だからこそ、契約のしかた一つでトラブルを防げます。

(1) 見積もりは「いつまで有効か」を必ず確認する

建材の値段が短い期間で変わる今、1か月前の見積もりが、契約のころには通用しないこともあります。「この見積もりは何日まで有効ですか」と書面で確認しましょう。

(2) 納期に幅を持たせた契約にする

「○月○日に必ず完成」と決めてしまうと、資材が届かないときに業者も困り、無理な代替品を使われる恐れがあります。「資材入荷次第」「○月から○月のあいだに完成」など、ゆとりのある書き方にしておくほうが安全です。

(3) 「資材変更が出たときの取り決め」を契約書に入れる

当初予定していたメーカー品が手に入らず、別の品に変える場合の連絡方法や、追加費用の上限を、あらかじめ書面で決めておきましょう。「言った・言わない」のトラブルが、いちばん多いケースです。

まとめ:焦らず、でも先延ばしにしない

イラン情勢の影響は、私たちの暮らしの根っこ──「住まい」にまで届いてきました。値上げのニュースを聞くと「もう何もしないでおこう」と動きが止まりがちですが、家の傷みは待ってくれません。

大切なのは、次の3つです。

  1. 我が家の状態を知ること(劣化のサインを自分の目で確かめる)
  2. 緊急度で優先順位をつけること(すぐ動く・今年中・少し待てる)
  3. 契約の条件を慎重に決めること(見積もりの有効期限・納期・資材変更の取り決め)

市民住まい向上委員会では、住まいに関するご相談を受け付けています。「うちはどうしたらいいだろう」と迷ったときは、お気軽にお問い合わせください。一緒に最善の道を考えましょう。

『一般社団法人市民住まい向上委員会 矢野克己』